戦国ジャズ、曲紹介の儀。

戦国ジャズの詩曲解説ブログになります。

【戦国ジャズ】捨奸 [島津豊久]

sengoku-jazz.bandcamp.com

 

 

島津豊久さまへ向けた戦国ジャズ。

哀しく切ない、それでいてわかりやすい、

どこか、俯瞰したような曲にありますな。

 

戦国ジャズは、過去の自作曲をリアレンジする場合も多く、

この曲もそうでした。

限界の悲しみの中にいる、といった風情で描いた曲を、

戦国ジャズとして構築し直し、新たによみがえったものです。

 

薩摩の血筋を受けたものとして、

何とも言えない気持ちになるのが、島津の退き口。

 

捨奸の精神は、当時は役に立ったかもしれない、

ただ、戦の世であってさえも、薩摩を包んだ悲しみの大きさ、

戦国ジャズリスナーの皆様におかれましては、

其処を見逃さぬようにしていただきたい。

 

多く命を大事にし、多く命に守られて帰還した、

惟新の殿の悲しみや、如何ばかりであったろうか。

 

先に描いた中馬さまの心の傷にしても、

その他、一千以上の将兵、その後遺族にしても。

悲しみから目を背けては為らぬな、と、思います。

 

平時の民がさらりと言うところの、

感謝、なんて言葉は、欺瞞にさえ聞こえる。

 

 

捨奸 詩・曲 柏木白泥

明日のことを憂いて不安になるならば
今日の不安を少しでも和らげることを
強く思い定めしは意地が有りし故
修羅場たらんとしても必ずや成し遂げん

無礼な軍使を追い返した時には定めていた
遣るべき事とはただ島津の名を落とさぬこと
己が拙さが仮に其れをしてしまうとしたら
生き延びたとしても心苦しからんや

天運は既に窮まる
伯父貴だけは生かさねばならぬ
共に過ごした日々より
学びし数多生かし切って大事を為さん

美しき其の若き将は殿を務むる
描きし理想は郷里の為を思えばこそ
苛烈な退き口を演じ其の命を落とす
生き延びた者らの彼を惜しむ様は

涙と共に

薩摩の者はまた語らう
知勇のみならず将として
確かに大器であった
仁と徳を弁えていた

哀しい
貴方が哀しい

意気に懸け命を落とすには早く
其の双肩が為したは確かに大きいが
己が身を生かして再起は図れじか
彼の死は家中を以て致しても信じ難く

三ヶ年も探させる程に

維新の殿にこそ
さぞや悼まれたことであろう

関ヶ原に散りし或る武者の話