戦国ジャズ、曲紹介の儀。

戦国ジャズの詩曲解説ブログになります。

【戦国ジャズ】鬼の素顔 [島津義弘]

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関ヶ原の戦いの日、ですな。

つまりは、島津の退き口、の日。

 

先祖、柏木源藤のみならず、

数多の命、関ヶ原を生き延びられなんだ命たち、

そのすべてへ向けて。

朝には念入りにお念仏をしました。

 

なかなか、戦の世の想像、などは容易ではありませぬが、

そして、それはそれで有り難いことにもありますが、

戦時の痛ましさ、その渦中で生きる苦しみ、

 

そういったものは忘れずにいたいものです。

 

実は、不肖それがし、柏木白泥。

若き頃に、柏木源藤を知らずして、

先祖が武士である、ということも信じて居れませなんだ。

 

様々な縁故で、気付きを得て、

今では立派な薩摩好きになりました。

あまり多くを語れる前半生ではありませなんだが、

この詩曲、島津義弘公が、命への敬意ともいえるもの。

 

それを描けたのは、少ない僥倖のうちの一つ、

で、あったように思います。

 

鬼の素顔 詩・曲 柏木白泥

弛まぬ武勇と磨いた気骨
それを両輪に据えながら
哀しみ深き世を切り拓いて行く
四兄弟の次男坊

痛みも苦しみも触れて生きてきた
それらを無くす術や有らん
まだ叶わぬことと弁えながら
必ずやと求め続ける

慕われて情を返す
それが皆々に伝われば
諍いなどは生まれようもない
常々心掛け明日へ向かう

強き勢は彼に従い
数多の敵を破り続けた
情愛を以て報いるは
鬼と呼ばれた者の素顔

郷土の為と立ち上がる意志
意地も矜持も事に足りず
また有るのは世を慈しむ心
惟を新たに弁えた

失くするも保てるも
戦の世なれば儘ならぬ
せめてただ勇ましからん
遺された者らと生き抜かん

やがて島津の武者達への
試練としての大戦がある
情けの遣り場に困る程の
地獄を駆けるような退き口

ひとつきり命を抱え
八十余と息も絶え絶えに
眺めた天地如何な色かと
慮れど灰の彼方はいまだ覗けず

過ぎた春秋の数を
ひとつひとつ数えて葬いながら

空を睨んだ

【戦国ジャズ】捨奸 [島津豊久]

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島津豊久さまへ向けた戦国ジャズ。

哀しく切ない、それでいてわかりやすい、

どこか、俯瞰したような曲にありますな。

 

戦国ジャズは、過去の自作曲をリアレンジする場合も多く、

この曲もそうでした。

限界の悲しみの中にいる、といった風情で描いた曲を、

戦国ジャズとして構築し直し、新たによみがえったものです。

 

薩摩の血筋を受けたものとして、

何とも言えない気持ちになるのが、島津の退き口。

 

捨奸の精神は、当時は役に立ったかもしれない、

ただ、戦の世であってさえも、薩摩を包んだ悲しみの大きさ、

戦国ジャズリスナーの皆様におかれましては、

其処を見逃さぬようにしていただきたい。

 

多く命を大事にし、多く命に守られて帰還した、

惟新の殿の悲しみや、如何ばかりであったろうか。

 

先に描いた中馬さまの心の傷にしても、

その他、一千以上の将兵、その後遺族にしても。

悲しみから目を背けては為らぬな、と、思います。

 

平時の民がさらりと言うところの、

感謝、なんて言葉は、欺瞞にさえ聞こえる。

 

 

捨奸 詩・曲 柏木白泥

明日のことを憂いて不安になるならば
今日の不安を少しでも和らげることを
強く思い定めしは意地が有りし故
修羅場たらんとしても必ずや成し遂げん

無礼な軍使を追い返した時には定めていた
遣るべき事とはただ島津の名を落とさぬこと
己が拙さが仮に其れをしてしまうとしたら
生き延びたとしても心苦しからんや

天運は既に窮まる
伯父貴だけは生かさねばならぬ
共に過ごした日々より
学びし数多生かし切って大事を為さん

美しき其の若き将は殿を務むる
描きし理想は郷里の為を思えばこそ
苛烈な退き口を演じ其の命を落とす
生き延びた者らの彼を惜しむ様は

涙と共に

薩摩の者はまた語らう
知勇のみならず将として
確かに大器であった
仁と徳を弁えていた

哀しい
貴方が哀しい

意気に懸け命を落とすには早く
其の双肩が為したは確かに大きいが
己が身を生かして再起は図れじか
彼の死は家中を以て致しても信じ難く

三ヶ年も探させる程に

維新の殿にこそ
さぞや悼まれたことであろう

関ヶ原に散りし或る武者の話

【戦国ジャズ】退き口を泣く [中馬重方]

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中馬重方さまへ向けた戦国ジャズ。

リフレイン系のジャズと、アンダーグラウンドオルタナティヴ、

その混ざり方が哀しさを更に呼び起こすような。

 

曲展開の仕方に、馬蹄の響きや、刀と刀のぶつかり合う音、

絶望的な情景、死にゆく仲間たち。そういった要素が感じられるよう、

誠心誠意つくり申した。

 

中馬重方さまが心的外傷、

忘れようにも忘れられぬほどの悪夢、修羅の生、

そういったものを描くに当たり、

適当な歌詞が見つかりませなんだ。

 

四行詩に込めた想い、

曲のあらまし、歌の息遣い。

余さず拾っていただけたら、と思いまする。

 

退き口を泣く 詩・曲 柏木白泥

戦の世が終を迎え
それでも尚残りし痛み
関ヶ原をば生き抜いた
彼の剛の者は咽び泣く

 

【戦国ジャズ】源藤の追憶 [井伊直政]

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井伊直政さまへ向けた戦国ジャズ。

曲調は何でござろう。文部省唱歌みたいなイメージで作った感じはありますな。

 

島津家従卒、柏木源藤の視点から、井伊直政さまを眺めたような詩にござる。

井伊さまは、島津の退き口、における追撃を行われた方。

その折に、柏木源藤の銃弾を浴び、

その銃創が元で亡くなられた、とか。

 

ただ、井伊さまが凄まじいのは、

徳川家と島津家と、の折衝役を任され、幕府の下、薩摩藩を残す流れを作られたこと。

この大いなる御働きに感じ入った柏木源藤、というていで書かせていただき申した。

 

柏木源藤は、諸国巡礼ののち、町人にまで落剝した、と公に伝えられておりますな。

井伊さまのご供養なども、もしかしたら、されたやもしれませぬな。

 

然れど人は変わる。

そして、

のちの世に、この感謝が伝わると願って。

この二文がこの詩の総てでござる。

 

あれほど恐ろしかった井伊直政、という徳川四天王の先駆け。

自分が撃ち抜いたその存在が、愛する郷里を守ってもくれた。

何とも難しき世に、ございまするな。

 

 

源藤の追憶 詩・曲 柏木白泥

然れど人は変わる
彼の赤き御仁も
拙き身の儂でさえも

戦はもう無くなった
和の世を行脚する
ただ詫びきれぬことを詫びる為に

思い出す恐怖
輩が倒れ逝く
命の奪い合いは
意地か矜持か

今とても恐ろしい
追憶を晴らし行く
徳の名に恥じぬ
篤き計らいを知りて

葵紋の傘下の四天王
先駆けたるその誇り
我が郷里を救う程の

世は変わり尽くし
最早功は立たぬ
否有り様が変わったか

儂が名乗りなど
とうに手放したわ
恩義と謝意だけを握り

弔いの旅路へ就いた心模様
自己犠牲には在らずして

清々しい心を遺してくださった
ただその御方を想いながら

長き生をゆっくりと歩み行く

きっと後の世に
此の感謝が
より清く伝わると願って

【戦国ジャズ】大樹の念慮 [徳川家康]

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戦国ジャズ再興後、記念すべき一作目となる、

徳川家康さまへ向けた戦国ジャズ。

家康公が身罷るときの風情を描いた、レクイエム調の曲にござる。

 

光に満ちた夕焼けが目に浮かぶようにあり、その画を採用した書き出し。

天下人として、悔いのない振舞いをしてののちのご逝去、

そうあったように、先ずは記し。

 

厭離穢土欣求浄土、は、著名な家康公の旗印にござるな。

こちらの解説は、ワードでご検索くだされ。

儂が拙い語り口など凌駕する、素晴らしき語り草にござれば。

 

重き荷と長き道、は、家康公の遺訓とされているものより。

彼のお方の人生を象徴するようなお言葉ですな。

 

天下を狙う程の人物、しかも、あんなにも荒廃した時代の。

そう思うた時に、人には言いようもない辛苦があったように思われ申した。

天に帰すように、という表現は、死後、神になられたことを由縁としたもの。

 

様々な問題こそあれ、265年も、大過なき世を作り上げたお方の、

民草への想い。並々ならぬものであったように思われた由。

そして何より、走馬灯のように蘇ったであろう、

岡崎時代より先立たれ続けた、股肱の臣らの死に顔。

 

幼き頃よりの苦労を想わば、死に際しての痛みなど、という気概。

微睡みながら、失せていくような痛覚。その両方を描き。

漸く仕事を終え、身罷れるわ、という、深き安堵。

 

そのような仕儀にて描き上げ奉り候。

 

 

大樹の念慮 詩・曲 柏木白泥

時は漂う夕暮れ
世には光満ちるか
遺すべきものを預けて
ただ諭すように逝く

厭離穢土と一つ唱え
太平の城下へ目をやる
つまびらかに吐露をすれば
重き荷と長き道であったな

語られざる辛苦は
永久に収めし想い
天に帰す魂
永久に続けよ願い

幸せに満ち足りた
日々を過ごせようかと

欣求浄土と一つ唱え
遠き三河の者らを想う
葵の大樹に寄り添うた
数多の亡骸に流す雫

苦悩たる若き日
今は微睡む痛み
離るるは浮世と
今と生きにし遺訓

東海一の誇り
民をば願う眠り